社長インタビュー
日々の習慣で
「心」も「体」も健康に。
代表取締役社長・和田が目指す
“OBC流・健康経営”とは
1980年の創業から現在まで、一貫して社員の健康を促進し続けてきたOBC。近年、その取り組みは「健康経営」という形で新たなフェーズを迎えつつある。健康促進に対する思いと、数々の施策について、代表取締役社長の和田成史に聞いた。
代表取締役社長 和田成史
1975年 立教大学経済学部経営学科卒業。1976年、公認会計士第2次試験合格。1980年3月公認会計士登録、6月税理士登録。
同年12月に株式会社ビック・システム・コンサルタント・グループ(現株式会社オービックビジネスコンサルタント)設立。
1999年に株式公開、2004年に東証一部上場を果たす。
2014年、公共の利益に貢献した人物に贈られる藍綬褒章を受章。
一般社団法人ソフトウェア協会(SAJ)名誉顧問を務める。
「心」と「体」の健康を、ステークホルダーと共に
「社員が長く健康に働くためには、まず心のケアが大切だと思っています。なぜなら、心が行動を決め、その行動が習慣になり、健康な心と体が養われていくからです」
健康促進に対する考えを聞くと、代表取締役の和田成史はこう即答した。
近年、職場におけるメンタルヘルス問題が深刻化していると言われている。厚生労働省もメンタルヘルス対策を推進しており、2014年6月には、労働者のストレスチェックを義務化する内容を盛り込んだ労働安全衛生法の一部改正法案が成立した。
「健康な心と体を養うためには、社員一人ひとりが自身の健康を気遣うことはもちろん、会社が積極的に取り組みを進めていくことが必要なのではないでしょうか」
2018年8月、OBCでは「健康経営宣言」を発表。その推進のための具体的な取り組みが評価され、4度にわたり、経済産業省と日本健康会議による「健康経営優良法人」に認定されている。
「健康経営には2018年以前から取り組んできましたが、あくまで社内向けの施策であり、社員に理解してもらえていれば十分だと考えていました。それを、IRの一環として宣言したのが2018年です。健康経営の推進を社外に向けて表現することによって、パートナー企業さまや取引先の各企業さまとも働き方改革や健康経営のノウハウを共有し、共に健康経営に取り組んでいきたいと考えています」
オープンでフェアな、働きやすい環境を目指して
一人ひとりが仕事に対する意欲を持ち、身体的にも精神的にも満たされた「ウェルビーイングな職場」を目指すこと。OBCは今、そのような環境づくりに取り組んでいる。
中でも大きな施策が、2022年の社内診療所の開設だ。体調不調の相談や怪我の処置から、心のケアやワクチン接種まで、社員の健康を幅広くサポートしている。この診療所では、社員だけでなくその家族に対しても、健康上の不安や疑問についての相談に応対しているという。
「健康経営宣言の中にも『会社、社員、その家族』という言葉をあえて織り込んでいます。社員あっての会社であり、その社員を支える家族もまた『チームOBC』の一員です。社内で活躍していきたいという女性も増えていますし、家族にとっても安心、オープンでフェアな働きやすい環境を目指していきたいですね」
「チームOBC」とは、OBCが大切にしてきた価値観の一つ。社員一人ひとりがプロフェッショナルとして高いパフォーマンスを発揮しながら、お互いを尊重し合うチーム意識の高さが、会社をここまで成長させてきたと和田は考えている。
「社員はお互いにビジネスの協力者であり、パートナーとして助け合う存在です。『チームOBC』として個人の強みや弱みを理解し、仕事をする上でのストレスを減らしていくためにも、さまざまな施策を実施しています」
その具体例が、クリフトンストレングス・テストなどの社員一人ひとりの優れた「才能」を明らかにする取り組みだ。これらを通して自己理解・相互理解を深めることもまた、「心のケア」につながっているのだろう。
なぜ「ラジオ体操」と「唱和」を続けているのか?
「私は会社を大きな家族と捉えていて、親が子どもに対して健康でいてほしいと望むように、社員に対しても長く健康に働いてほしいと考えています。この考えは、創業当時から変わりません」
OBCには、1980年の創業当時から、健康促進のために継続してきた2つの施策がある。その1つがラジオ体操だ。
「創業時に、知人から『ラジオ体操を毎日続けると、将来変わってきますよ』と言われたことがきっかけでした。社員が1桁しかいなかった頃から、40年以上たった今も、当社の朝はラジオ体操からスタートします」
健康に関するもう1つの施策は、朝礼での「唱和」。これは、心の健康を守るための取り組みであると、和田は言う。
「何度も同じことを言うようですが、仕事をしながら心の健康を守るためには、チームの人間関係が良好であることが欠かせません。感謝の言葉など、皆で同じメッセージを唱和することで、お互いに対して『今日1日、一緒に仕事をしましょう。よろしくお願いします』という気持ちで接してもらうことを目的にしています」
コロナ禍で感じた「習慣を続けること」の重要性
社員の健康を願う一方で、和田自身はどのように健康を管理しているのだろうか。「誰しも若い頃は無理をしがちですよね。私も例に漏れず、若い頃は無理をしながら働いていました」と、和田はしみじみと振り返る。
「創業時はものすごく忙しくて、徹夜や残業が当たり前でした。ストレスが溜まるとタバコを吸って、健康は二の次と思いながら経営に没頭していたんです。ただ、年齢を重ねるにつれて次第に無理がきかなくなり、健康の重要性を感じ始めました。2004年に上場してからは、食事や睡眠にも気を配るようになって、禁煙にも取り組みましたね」
そんな努力もあってか、若い頃に無理をしたものの、毎年の健康診断で再検査と言われたことは過去一度もなかったという。そんな和田が危機に直面したのは、コロナ禍のある出来事がきっかけだった。
「社員の安全を守るため、コロナ禍はリモート出社に切り替えました。しかし、それによって朝のラジオ体操が中断してしまったんです。おそらく体を動かす習慣がなくなったことが原因でしょう、家でゴルフのスイングをしたら足に痛みとしびれを感じました。急いで病院に行ったところ、脊柱管狭窄症と診断。健康を守るためには、習慣がいかに重要かということに改めて気づきました」
脊柱管狭窄症と診断された後、医師からは「来週にでも手術をしましょう」と勧められたが、運動麻痺がなかったため自力で治す方法を選択。ウォーキングや柔軟体操を毎日の習慣に取り入れ、手術をしなくても問題ないところまで改善させた。
「出社の機会が増えて、ラジオ体操の習慣が戻ってからも、ウォーキングや柔軟体操は続けています。ウォーキングの目標は1日1万歩。出社前後や昼休憩など、ちょっとした時間に歩いたり、取引先との打ち合わせにも早めに向かって歩く時間を作ったりしています。1日のスケジュールを見て、どの時間に歩こうか考えるのが、今では楽しみの一つですね」
柔軟体操は起床後、1日10分を目安に。睡眠中にこわばった体を柔らかくほぐし、血流を促すことが、脊柱管狭窄症の症状改善にも効果的だという。
「運動の習慣をつけることで、体力がつきますし、体の動かしやすさも変わってきます。社員の皆も、今は会社の規則に従ってラジオ体操をやっているかもしれませんが、きっとある程度の年齢になった時に、その習慣の大切さを実感するのではないでしょうか。そういった意味で、毎朝のラジオ体操は社員に対するプレゼントだと思っています」
社員の健康あってこそ、会社は発展できる
健康経営宣言から5年がたち、社内の健康意識はどう変わったのだろうか。
「健康を考えた働き方をしようという意識が、OBCのカルチャーとして根付きつつあると感じています。健康診断の受診率や、ストレスチェックの受験率を見ても、社員の健康意識は高い方だと思いますね。コロナ禍を経て、世の中の健康意識も変わりつつあります。若手社員にもベテラン社員にも、より健康意識を高めてもらうために、今後は健康管理に役立つ情報などもブログを通して発信していきたいと考えています」
会社とは、ただ仕事をするだけの場所ではない。社員の生活を支え、成長を促し、その成長が会社の発展にもつながっていくと、和田は考える。
「あいさつが飛び交うこと、笑顔でいられること、チームのメンバーと優しさや温かさを分かち合えること。こういったところに、会社の健やかさが表れると思っています。社員一人ひとりに生き生きと働いていただくためにも、そのベースとなる体と心の健康を、OBCはこれからもサポートしていきたいと思っています」
【取材日:2024年1月16日】